退職後、久しぶりにのんびりと過ごしていたある日、一本の電話がかかってきました。
聞き覚えのある声。
数か月前まで毎日のようにお会いしていたお顔が、瞬時に蘇りました。
「あ! K先生!」
K先生は、職業訓練生の事務手続きをはじめ、さまざまな業務を総括してくださっていた先生です。
インストラクターとは別に、訓練生一人ひとりを日々温かく見守り、親身に支えてくださる存在でした。
K先生は私と同世代ですが、まさに「デキる女性」。
複雑な業務もテキパキとまとめ、訓練生一人ひとりの様子をよく見ながら的確に指示を出される姿に、私は密かに憧れを抱いていました。
そんなK先生からのお電話。
「元気?どう?お仕事は?」
近況を尋ねられたので事情をお話しすると、K先生がさらりと言いました。
「じゃあ、訓練のアシスタントやってみない?」
あまりにも軽いノリだったので、一瞬耳を疑いました。
さらに、
「困っているんだよね。次の訓練のアシスタントがいなくて。」
「メインのN先生と一緒に仕事してみない?」
そう続けられたのです。
私は、その言葉を理解するのにしばらく時間がかかりました。
その間、頭の中はこんな状態でした。↓↓↓
「アシスタントって、後ろで立って授業についていけない受講生をフォローする仕事でしょ?
えーっ!? あの、どうにかこうにか付いていっていた授業を、私がサポートするの???
いやいや、できるわけがない!」
さらに、
「しかも、N先生って、あのN先生だよね。
あの恐ろしい(失礼!)、みんなが怖がっていたN先生!
そんな先生のアシスタントなんて、とても務まるわけがない!!!」
もちろん、この心の声をそのままK先生に伝えるわけにはいきません。
そこで、精いっぱい大人らしく変換して、
「とても私にはできそうにないので、ほかの方をあたってください。」
と、お返事しました。
ところが、K先生は引き下がりません。
「えー、お願い~!!!」
皆さんも、勧誘などを断るときによく使う作戦かもしれませんが、私はとっさに、
「一旦、夫と相談してみます。(何を相談するのやら……笑)」
と答えました。
するとK先生は、
「わかった。また連絡するね!」
と、あっさり電話を切られました。
私は「とりあえず、この場はしのげた」とホッと胸をなで下ろしました。
しかし、その安心は長くは続きませんでした。
K先生は、本気だったのです。
そして、このあと本当に再び連絡をくださることになるのでした。
